サラリーマン兼業投資家による『賢明なる投資家』の解釈

 

引用:『賢明なる投資家―割安株の見つけ方とバリュー株投資を成功させる方法』

(著:ベンジャミン・グレアム 監修:土光篤洋 訳:増沢和美 新美美葉)

 

サラリーマン兼業投資家歴3年の筆者です。

私は株式投資歴3年目で年間100万円の利益を出すことが出来ましたが、そこに至るまでに株式投資の教科書として参考にしてきた『賢明なる投資家』について私なりの解釈をまとめてみました。

この記事は

・株式投資に興味があるが何から学べばよいか分からない方

・株式投資について勉強するために参考になる本を探しているしている方

・『賢明なる投資家』を読んでみたがよくわからなかった課方

向けの記事となっています。

また、今回紹介する『賢明なる投資家への道』は1970年代前後のアメリカ市場について研究・分析された一冊ですが、現代の日本市場でも活用できる内容もあると思います。

※本記事には個人投資家である筆者の個人的な判断、見解等が含まれます。曲解等がありましたらご指摘いただきたく存じます。また、本記事は株式投資を積極的に勧める意図はございません。株式投資はご自身の判断でしていただけますようお願いいたします。

 

 

その1:グレアムの研究の成果

 

・個別銘柄の予測はほぼ不可能。総合的な予測と広い分散投資が必要。

還元利回りを重視した銘柄選定を行うべき。

 

個別銘柄の予測については予測の範囲が短期・中期・長期のそれぞれの目線によって異なるとは思いますが、正確な予測をすることは難しいでしょう。ですが、株式投資の世界には流行やアノマリー(説明のつかない株価の値動き)、金利や世界情勢等の情報を把握することで精度を高めることが可能であると私は判断します。

広い分散投資についてはETF(株価指数連動型の投資信託)に投資をすることで解決します。

還元利回りを重視した銘柄選定につきましては、投資の目的によって異なります。例えば、インカムゲイン(株式を保有することにより得られる配当などの利益)を得る事を目的とした投資であれば当然還元利回りを重視すべきですし、反対にキャピタルゲイン(保有した株価の上昇による売却益)を得ることを目的とした投資では還元利回りだけでなく‘‘株価が上がる要因‘‘を重視すべきです。この点については投資家の投資スタイルによって異なるため一概に判断することはできません。

 

その2:個別銘柄選定時の着目点について

 

①全般的な長期見通し

その銘柄が長期的に見て成長見込みがあるかどうかを全般的に考慮し、予測する。

 

成長見込みの有無については時勢に大きく左右されますが、決定的な要因がなければ需要の減らない分野への投資が必要になるでしょう。例えば、生活必需品やヘルスケアセクター、食料・飲料セクター、防災関連セクター等が挙げられます。

 

②経営者

経営者の交代が最近なされ、それによる影響が 実際に数字となって現れない段階にある企業には注目する。

こちらについては株探(URL:https://kabutan.jp/)や日経電子版等のツールを利用して日々チェックすることにより経営者の交代した企業を把握し、その後の業績を追っていくこと方法がおすすめです。

また、私の個人的な見解ですが業績の振るわない事業から撤退して別の‘‘価値のある事業‘‘への移行中の企業の業績は上昇の期待ができるのではないかと考えています。ただし、外的要因による事業撤退をせざるを得なくなった企業についてはその限りではないと考えています。

 

③財務内容の健全性と資本構成

株価及び一株あたり利益が同じなら、 多額の余剰現金を有し、 かつ優先証券の発行が皆無の企業の方が、 優先証券を発行し多額の銀行借入のある企業 よりも優れた投資対象である。

価格や優先株の発行残高に比較して普通株が非常に少ないとき、 状況によっては普通株で 大きな投機利益を得られる可能性がある。

 

資産ではなく余剰現金を有することに着目する理由については、現金や流動資産(短期間で現金に換金できる資産)の多さは株主還元の期待に繋がるためであると考えられます。

※優先株(他の株式に対して優先的地位を持つ株式)については、筆者自身の知識不足により解説を控えさせていただきます。ご了承ください。

利益剰余金>有利子負債の企業の方が業績が安定しやすく一般的に株主還元の期待が高いと判断できます。

 

④配当実績

過去長年にわたる配当支払い実績がある。 過去20年以上に渡って滞りなく配当があれば 企業の質を評価する時のプラス材料になり得る。

配当支払い実績については、利益を出し続けている、あるいは赤字だとしても配当支払い能力がある程には財務力が強い企業である証明になるためだと考えられます。

 

⑤現在の配当率

株価の伸びが最も重視されているわけではない株式は「インカム銘柄」として分類され、そこでは配当率が最も重要な株価決定要因になっている。

一方、高度成長株は、将来の、例えば向こう10年間の期待成長率によって評価され、現金配当率はほとんど問題にされない。

 

 

配当率が高いということは株主還元に積極的である(配当性向が高い)か株価が安すぎるかのどちらかの要因が考えられます。前者については利益が出ているまたは流動資産が潤沢なことが考えられます。後者についてはその企業の評価が割安であると判断する材料になり得るのではないかと考えます。

 

その3:強気相場の特徴

 

①歴史的に高い株価水準

強気相場については日経平均株価で例えると30000円を超える程度といえば理解しやすいかと思います。

②高いPER (株価収益率)

PERが高い=株価が割高である傾向にある

③債券利回りとの比較における低い配当利回り

この点については株価の上昇による配当利回りの低下も含まれるかと思います。

④信用取引による投機の増加

市場参加者が増え投資に対する慎重さが欠ける状態

⑤低品質普通株の新規公開件数の増加

IPO(新規公開株)件数の増減は市場の値動きに連動する傾向にある

 

 

その4:防衛投資家向け

 

①10銘柄以上30銘柄以下

②財務内容の良い有名大企業

③長期間継続的な配当金支払いが有る(過去20年間ほど)

④過去7年程の平均企業収益を参考に買い付け価格の上限を決める
(ex:過去7年間の平均企業収益の25倍+過去1年の企業収益の20倍 等)

 

本書では投資家について積極的投資家と配当の再投資などの複利による資産の増加を目的とした防衛的投資家に分類しています。①上にも記しましたが個別銘柄の株価予測は難しいため株価暴落による損失リスクの低減を目的とした複数銘柄への分散投資が合理的です。 ②財務内容の良い有名大企業は倒産しにくく、よほどの要因がない限り株価が大きく動きにくい③配当支払い能力がある程度には利益が出ているまたは財務が健全④その株を保有することによっていくらのインカム・キャピタルゲインを得たいのかを明確にする。また、7年分のインカムゲインを得ることを目的とした投資において、その額に相当する株価の上昇(キャピタルゲインの発生)があった場合に売却することで得られる利益は同じであり、株価が購入時より下がるリスクも考慮するとより安全であると考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

二流企業の定義

経営状況が良く、 過去に十分な業績を上げながら、一般的には魅力のない銘柄と思われている企業

このような企業を見つけたら業務改善を行っているかをこまめにチェックすることで株価が大きく上昇するチャンスをつかむことができるかもしれません。気になる銘柄が見つかったら中期経営計画等の今後の動向には注視したいところです。

 

二流企業の特徴

①配当が比較的高い

②再投資された収益が株価より多い

③強気相場は低価格の株式に対して最も有利に働く

④企業の業績は何らかの新しい条件、 新しい経営方針、 経営者の交代によって是正される

⑤大企業による小企業の吸収合併

 

①配当性向が高いまたは株価が割安②    ③強気相場 ④何らかの新しい条件=国政や世界情勢(ex:ガソリン車から電気自動車への移行、)の変動、地理的要因、 ⑤吸収合併の場合は  子会社化による分離

 

 

①財務状態
流動資産が流動負債の少なくとも1.5倍以上であり、かつ負債が正味流動資産の110%以下であること

②収益の安定性
過去5年間において欠損を出していないこと

③配当の実績
現在配当が支払われていること

④収益成長
前年の収益がその年のそれ以上であること

⑤株価
1株当たり正味有形資産の120%以下であること

 

①負債の多い二流企業は倒産リスクが大きい②今後の成長を見込める、二流株から一流株に変わる可能性がある③財務に余裕がある④黒字経営が存続することによる企業規模の拡大⑤株価が安い(高すぎない)

 

 

 

 

その4:割安株で金を儲ける方法

 

・十分な銘柄数を見つけて投資を分散し、なおかつ買って直ぐに値が上がらなくても我慢出来る忍耐力を身に付ける。

株価が2倍、5倍、10倍...といった上昇をするためにはそれ相応の時間が掛かることを知っておくこと。また、短期間で著しく上昇する株は短期間で著しく下落するリスクもはらんでいる。

 

・過大評価されている株は避ける

その企業の事業内容や決算内容等に関わらず株価が上昇している株はいつ下落してもおかしくない状況である。

 

・質の劣った小型株のほとんどは、強気相場では過大評価されがちであり、またその後の株価下落では有力銘柄と比較してさらなる下落を示すのみならず、 回復が遅れる傾向にある。

弱気相場時には株価の上昇要因がなければ株価が上がらないため

 

・二流株は完全なる割安銘柄と言える場合以外には、手を出してはならない。

二流株はハイリスクであるため、手を出さないことが賢明である。しかし、株価下落要因がなく、割安であると判断できる株については投資妙味がある。

・割安であっても月並みな企業は避ける (それなりの価格帯で、 もっと良い価値の高いものが無いか調査する)。

割安株が月並みであるということは上昇期待が少ない。つまりリスクが高い株を買うには理由が必要

 

 

まとめ

私自身が本書から得た教訓は株式投資は自身の投資スタイルに必要な材料(情報)の総合考慮に基づいて行うべきであるという点です。

本書を手にした方がご自身の投資スタイルに合った総合考慮の材料を見つけられればと思います。

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